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  • 執筆者の写真Mikiko Tamaki

夏至祭


今日は夏至、と友人のHちゃんから聞いた。

そうか、夏至。サマーソルスティスと聞くと、今から10年以上前、スコットランドの共同体「フィンドホーン」で参加した夏至祭のことを思い出す。

フィンドホーンの名前を聞いたのは、これまた今から15年くらいまえ、三鷹でほんの数回だけ援農をさせていただいた農家の奥様から。

もともと看護師をしていたというその方は、夫となる農家さんの姿を見て、「そうか、土に必要なものは人間に必要なものと同じなんだ」と思い至ったと話していた。

そして、「もし、興味があったらぜひ、行ってみるといいわよ」と、私にフィンドホーンをすすめてくれたのだった。

なぜかずっとずっと、その場所が気になっていて、29歳の夏、ついに訪ねることができた。

ロンドンから電車で向かったら、地の果てかと思うくらい遠く、到着したらやっぱり地の果てだったのかと思うような小さな街のはずれにそこはあった。

「日常にしっかりと根ざしたスピリチュアリティー」が主眼とのことだが(いま日本語HPを見たら書いてあった)、ほんとうにそんな感じで、誰も気負わず、妙にやさしかったりはせず、畑仕事をしたり、料理をしたり、思い思いに暮らす日常の間に、瞑想があり、歌があり、祈りがある。そんな日々をすごした。

ドロップインでこの共同体を訪れた人は、敷地内にあるB&Bを拠点にし、ガーデン(畑)かキッチンの手伝いをすると、食堂でご飯を食べるミールチケットがもらえる。今は変わったかもしれないけれど、当時はそういう仕組みになっていた。

バイオダイナミクス農法に関心を抱いていた私は、主にガーデンを手伝っていたけれど、ときにはキッチンにも入った。そして普段はベジ食が中心だったのだが、夏至祭の日には特別、庭にバーベキュー台だ出され、もうもうと煙をあげて肉が焼かれていた。やぐらのうえに、植物で作った夏至の飾りもあった。いつもよりちょっと華やいで、みんなワイワイと楽しそうにしていた。

肉を焼いているビジュアルが鮮烈に記憶に残っていて、肝心の肉の味は覚えていない。(豆料理がすっごく美味しくて、ベジ生活が全然苦じゃなかったことの方が覚えている)

それが、夏至祭の日の記憶。

美しい花が咲いていて、石でできた小さな瞑想室や、有機的なラインのコンサートホールのある共同体での日々。

一回、すんごい悪夢を見たりもしたけど、10日いる間に不思議と友達もできた。フランス人の農業ジャーナリストや、大柄なドイツ人の男性や、パソコンのエンジニアだというそこに暮らす人や。なつかしいな。いろんなことを話した。

ある夜は、社会に出たフィンドホーンキッズたちが集うパーティーにまぎれこんだこともあった。親が選んでここにきて、暮らしたことは悪くはなかったけれど、ここに暮らし続けるためには結局お金がかかるし、まあ、いろいろね。BBCだかで活躍しているという女の子に、そんな話を聞いた。

思い出が真空パックみたいになって、いつまでも香りが消えることがない。一度開けると、ふわっと全部が匂い立つ。もう一度行って、またあの瞑想室に座ってみるのもいいな。

行くならやっぱり、夏至の頃がよさそう。うん、きっとそうしよう。


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